夫婦/カップルでの面接は(その実施に明確なリスクが存在するいくつかの場合を除けば),多くのカップルにとって望ましいものであると考えられます。
カップルでの面接への参加をお勧めするケースを以下にいくつか紹介します。
家事,育児,仕事のこと,お金のこと,将来のことなど,カップルが共に生きていくうえでは,いくつもの話し合いを必要とすることがらがあります。友人や職場の同僚となら,なんかくコミュニケーションがとれるという人でも,ことカップルでの話し合いとなるとお互いにうまくいかないということはとてもよくあることです。
“カップル”という関係は,他の誰よりも心理的に近しい関係であり,さらに,永きにわたり付き合いを続けていくことが期待される“特別な関係性”です。
だからこそ,二人の間で折り合わない意見や,主義・主張,はたまた性格の違いがについては,どうしても見過ごせなくなってくることもあるかもしれません。
他の誰よりも,こころが近くにあるはずの相手が,一体何を考えているのか分からないということは,それだけで気持ちを動揺させるかもしれません。しかし,現実には,“こんなに近くにいて,ずっと一緒に過ごしてきたのに”,相手が何を考えているのか分からない,ということも珍しいことではありません。
それは,相手が怒っていることの理由がいつも分からないといったことかもしれませんし,いつも自分のことを話してくれないから分からないのかもしれません。
人間は,無条件で他者を信頼できるようにはできていません。一般的に,カップルは時間をかけてお互いへの信頼を少しずつ築いていくものです。
その一方で,カップルにおける信頼関係とは,一度築いたらめったなことでは崩れない石垣のような頑丈なものというより,むしろ,日々,太陽の光と水とを必要とする芝生のようなものに近いのかもしれません。
青々とした美しい芝生は,そこにあたりまえのように存在してみえて,実際のところは日頃からのケアを必要としているのです。
一旦,崩れかけてしまった信頼,または崩れてしまった信頼を再生させるには,外からのサポートが必要かもしれません。
良好な夫婦関係を維持することが,しばしば難しいことが事実であるのと同様に,両親間のいがみあいが子供の心身の健康を損ねることはよく知られた事実です。離婚するかしないかに関わらず,良好な両親の関係性こそが,こどもの健やかな成長には必要です。
参考
『離婚前後の夫婦関係と子どものメンタルヘルス-発達精神病理学からの理解-』(お茶の水女子大学 菅原ますみ)