アサーションの歴史 | 立命館大学 三田村研究室

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アサーションの歴史

アサーションの歴史

「行動療法におけるアサーション・トレーニング研究の歴史と課題」
(三田村仰 2009 人文論究)をもとに作成。

*アサーション・トレーニング(以下,AT)

アサーション・トレーニングの誕生(1949年一60年代)

アサーションの起源は,1949年に出版されたAndrewSalterの『条件反射療法(Conditioned ReflexTherapy)』に由来します。

Salterは,本来人間とは,もっと自由で「活動的」な生き物であるが,,多くの人は子ども時代に受けた躾や社会的規範などによって「抑制的」になってしまっていると考えました。そこで,本来の活動性を取り戻す意味でアサーション(自己主張)が必要であると考えました。

その後,アサーションについての大きな発展は特になく…。

Salterから10年を経て,Wolpe(1958)は,神経症の治療において,「弛緩反応」,「性反応」とともに「アサーション(主張反応,assertiveresponse)」が,不安の抑制に特に有効な反応(神経症性反応への逆制止)の1つであるとして,アサーション(自己主張)を再び取り上げました。

WolpeとLazarus(1966)はこの主張行動の重要性に着目し,不安に拮抗する反応として,怒り感情の表出を含む主張行動のトレーニング,すなわち,アサーション・トレーニング(以下AT)を開発したのでした。

アサーション・トレーニング研究の発展(70年代初頭)

70年代初頭になるとATの効果研究が始まりました。
質問紙や行動評定などを用いてATの効果研究及びトレーニング技法の研究が進み,AT研究は70年代後半から80年代初頭にかけて最盛期を迎えました(Brown&Brown,1980)。
同時に,このATの最盛期は,アサーションについての様々な課題が取りあげられた時期でもありました。
右の本は,アサーションについての当時からのベストセラー『Your Perfect Right』です。日本でも『自己主張(アサーティブネス)トレーニング』の名で翻訳したものが発売されています。

アサーション・トレーニング研究の挑戦(70年代後半)

アサーションについての課題は益々その存在感を大きくしていきました。
それに応じるように,いかにしてアサーションの課題を解決するか多くの研究者・実践家が力を注ぎました。

たとえば,アサーションというあいまいな概念を何とか定義しようと,非常にたくさんのアサーションの定義が提唱されました。

アサーション・トレーニング再考とSSTへの移行(80年代)

80年代に入り,アサーションは最盛期を迎えると直ぐに,今度は研究数の減少の一途をたどります。

それまでアサーションを研究してきた重要な研究者でさえ,アサーションというあいまいな概念を使用するのはもうやめようと提案しはじめたのです。

アサーションはその後,社会的スキルの一部として扱われることが多くなっていきます。

Linehanの心理社会的スキル・トレーニング(90年代)

アサーションの代表的な研究者であるLinehanは,アサーションの概念を新たな形で生かし続けました。

Linehanの提唱するアサーションとは「対人的効果性」という自己表現の「機能」によって定義するアサーションの概念です。

Linehanは,現在アサーションという言葉をほとんど使いませんが,「弁証法的行動療法」(右の本)という革新的な心理療法の中で,アサーションの概念をいまでも活かしています。

文化適合的アサーション・トレーニング(2000年代)

Linehanの考える「アサーションの機能」という考えに基づくと,これまでのアサーションの課題を克服する可能性が生まれます。

「アサーションの機能」に注目した「機能的アサーション」という概念が2008年頃,我が国で提唱されました。

機能的アサーションの概念に基づけば,ATは,より日本文化にも合った柔軟なものになると期待できます。

このホームページの目的は,「機能的アサーション」の概念を紹介することにあります。