アサーションの課題と展望 | 立命館大学 三田村研究室

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アサーションの課題と展望

アサーションの課題と展望

アサーションは大変有意義な概念です。
しかし,その一方で解決すべき課題もアサーションには残されているのです。

アサーションと攻撃的行動との線引き問題

アサーションと攻撃的行動とは異なる自己表現であるべきです。このことはアサーションの多くの研究者・実践家が認めることでしょう。一方で,アサーションと攻撃的行動をきれいに分けるのは意外に難しいのです。これまで多くの研究者・実践家がこの課題に取り組んできました。それでも,アサーションと攻撃的行動とを明確に分ける基準はいまだに見つかっていません。

機能的アサーションはこの問題を解決する可能性を備えています。

詳細は以下の文献をご参照ください。

アサーションの効果的な適用領域の限定性

アサーションは,自分自身のことが自己表現できない多くの人々にとって役立つ概念でした。一方で,多くの場合「率直さ」が強調されるアサーションにおいては,率直な自己表現が効果的でない場面があることが明らかです。

したがって,率直さを強調したアサーションにおいては,効果的な適用領域が限定されるという課題が考えられます。

この課題の解決には,率直さを強調しない機能的アサーションなアサーションが鍵と考えられます。

詳細は以下の文献をご参照ください。

アサーション概念のあいまいさ・多義性

アサーションは,理想のコミュニケーション・スタイルと考えることができます。多くの研究者・実践家がそれぞれの考える理想をアサーションに詰め込んだ結果,アサーションは多義的であいまいな概念になってしまいました。

アサーションがあいまいであることは,「アサーション」という一つの言葉の意味を巡って対立が生じる可能性をはらんでいます。実際,アサーションの妥当な定義を巡る議論がおこなわれてきています。
この課題は,なかなか根深い問題なのです。

我が国におけるアサーション・トレーニングの効果検討が少ない

欧米においては,アサーション・トレーニングの効果についてのデータが発表されています。
一方我が国では効果に関するデータが非常に少ないのが現状です。

アサーションの概念は捉えにくいため,測定自体も容易ではありません。
今後は,量的研究,質的研究含め,効果的にアサーション・トレーニングの効果を検証していくことが期待されます。

近接領域との連携が弱い

アサーションに関する研究は,交流分析,論理療法といった領域との連携がみられています。しかし,アサーティブになれない理由のかなりの部分を「対人不安」が説明することがわかっているにも関わらず,「対人不安」を扱った社会心理学領域との連携や,類似の概念である「社会不安」を扱った精神病理学領域との連携がほとんどあえません。

また,上手な自己表現の方法については,言語学や社会心理学が大きな貢献をすると考えられますが,これまでのアサーションについての研究では,これらの観点からアサーションを検討した研究は非常に少ない状態にあります。