「文脈的カップルセラピー(CCT)」は,日本のカップル関係を支援する目的で開発された日本生まれのカップルセラピーです。CCTは日本で初めて科学的にその効果の検証がなされ,その有効性が支持されているカップルセラピーのプログラムです。
この短い解説は,お二人がより安心して面接に参加できるように,また,限られた面接の時間を最大限,有意義に活用いただけるようになることを目的にしたものです。
(カップルセラピー一般については「カップルセラピーとは」もご参照ください)
CCTが目指すこと
CCTのセッションでは,大きな方向性として,面接に参加するパートナーのお二人がより親密な相互作用ができるようになってゆくことを目指します。ここでの親密な相互作用とは,お二人がお互いに,目の前の相手から,そして,自分自身の内面からのニーズ(大切なこと)に耳を傾け,そられにこころから応えようとする関わり合いのことです。そのようにお互いに応え合うコミュニケーションは,健康的で豊かなカップル関係の鍵だといえます。鍵があることでドアの向こうにも進めるように,親密な相互作用があってこそ,お二人は家事・育児,仕事,お金,性のことといったさまざまな具体的な課題についても,より柔軟で効果的に取り組んでいくことができるようになるでしょう。
CCTの面接でおこなうこと
お二人がとりあげたいテーマは自由です。最初の面接では,基本的には,お二人に回答いただいた事前アンケートの結果をお二人とセラピストとで共有することで,お二人の関係性の特徴や現状について,三人で整理をおこなってゆきます。この段階で,お二人はお互いがご自身との関係をどのように体験しているかを知ることになります。最初は数量的に,徐々に,具体的エピソードと体験しているお気持ちを三人で共有してゆくことになります。
セラピストが無理に,お二人に何かをさせたり,話させるようなことはございません。セラピストは,お二人にとって安心でき,実際に安全な場を保つことに責任をもちます。
ご参加にあたって準備いただきたいこと
事前アンケート(心理尺度)に,お二人それぞれでご回答ください。このアンケートの結果をもとに,担当セラピストがお二人の現在の関係性の特徴を把握し,お二人との面接を進めてゆきます。
お二人がセッションに集中しやすい時間帯や場所を確保いただければと思います。お子様や他のご家族など居られる場合は,お二人以外の他の方に声が聞こえたり,部屋に入ってくること,途中でセッションが中断されることなどがない環境をぜひご準備ください。
お二人が仲良く,冷静な状態でセッションに参加していただく必要はございません。喧嘩中でも,腹が立っていたり,いくらか落ち込んでいる状況でも問題ございません。
CCTへの参加で起こりうる変化
CCTは基本的に超短期(2~3セッション)で実施されるプログラムであり,お二人に起こりうる変化には当然ながら限界があります。しかしながら,これまでのCCTの研究によれば,参加したカップルが面接の中で親密な相互作用の実現に取り組まれることで,実際に参加前後で関係性の質の向上が認められています。多くのご参加の方々が「自分の気持ちを相手に話せた」「相手が抱えていた気持ちを改めて知ることができた」と語られています。また,お互いを理解し合う,そうした親密な相互作用を通して,結果的に,日々のコミュニケーションの仕方や具体的な課題に対する取り組み方にも変化が起こったことが語られています。